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専攻長からの挨拶
東北大学の数学教室は,1911年の創設以来,110年以上にわたり,代数学・幾何学・解析学・数学基礎論などの幅広い分野において,国内外に優れた数理人材を数多く輩出してまいりました.その長い歴史の中で,大学院重点化や国立大学法人化,震災からの復興,新型コロナウイルス禍での教育体制の見直しなど,様々な変化と困難を乗り越えて,教育・研究の両面で絶えず進化を続けております.
数学教室では,学部課程において,未知なる問題に挑むための堅実な基礎を養い,大学院ではそれをもとに世界に通用する新たな定理を創出する力を育成しています.これは,高校までの数学とは異なり,誰も答えを知らない問いに挑む営みであり,精密な論理的思考と持続的な探究心が不可欠です.最初は戸惑うこともあるかもしれませんが,数学教室の教員陣が丁寧にサポートいたしますので,安心して学びに臨んでください.
数学の重要性は近年ますます高まりを見せており,AIや金融,データサイエンスといった実社会のさまざまな領域で,数学の果たす役割は極めて大きなものとなってきました.数学教室では,様々な学際的な研究連携を通じて,純粋理論のみならず応用分野にも積極的に取り組んでおります.社会課題の解決に寄与し,他分野との協働によって数学そのものの発展をも促進する姿勢は,これからの時代に不可欠なものと考えております.
数学教室で学ぶ学生は,考え抜く力や前に踏み出す力,チームで働く力といった能力を,研究活動や成果発表を通じて自然と身に付けていきます.柔軟な発想力,粘り強さ,論理的に説明する力などは,現代社会において極めて高く評価されるスキルであり,卒業生たちは学術界にとどまらず,産業界・教育界など様々な分野で活躍しています.
近年は,オンラインツールの導入・活用が進み,コロナ禍で得た経験も活かしながら,対面とデジタルを柔軟に使い分けた教育・研究活動を展開しています.これにより,より多様な学びのスタイルに対応できる体制が整いつつあります.
2023年には,東北大学が国際卓越研究大学を目指す対象として国から認定されるなど,我々を取り巻く環境もますます国際的な広がりを見せています.こうした動きの中で,数学教室も変化を柔軟に受け入れつつ,変わらぬ本質――数学という学問の深さと面白さ――を大切にしながら,未来に向けた歩みを進めてまいります.
数学は,人と人との議論が不可欠な,非常に人間的な営みでもあります.数学教育と研究の現場には,黒板を囲んで思索を深め合う姿が今も変わらずあります.こうした営みをこれからも大切にしながら,数学教室は未来を担う人材の育成に尽力してまいります.
今後とも,東北大学数学教室をどうぞよろしくお願い申し上げます.
2025年4月1日
数学専攻長・数学科長
寺嶋 郁二